• 言葉を深めて、相手に伝える



    ある日のご結婚披露宴、
    新郎友人のスピーチ~

    新郎新婦はすでに入籍し、披露宴の半年前から
    一緒に暮らし始めていました。

    新郎とその友人は、学生時代からの親友。

    新婚生活を始めたばかりの新郎とお酒を飲みながら
    未婚の友人は、こんな質問をしたそうです。

    「ねえ、ねえ、結婚ってどんな感じ?」

    新郎は一言。

    「うん、すごく落ち着く」

    と答えました。

    その友人は家に帰って、
    “落ち着く”という言葉を辞書で調べました。

    すると、

    落ち着く= 気持ちがなごむ、心が休まる、
    安心する、楽になる、癒される、穏やかになる

    と、書いてありました。

    いつも周囲に気配りばかりで
    自分は後回しの新郎が、
    こころ休まる女性と出逢って、
    ホッと落ち着ける場所を見つけたんだな。

    彼は、大切な友人のしあわせを、
    自分のことのように嬉しく感じたそうです。

    このスピーチの素晴らしさは、
    新郎の口から語られた

    「落ち着く」
    という誰もが知っている身近な言葉を
    あえて調べて、その意味を深めたこと。

    この素朴な一言に、
    幸せな結婚を象徴する多くの意味があり、
    それを伝えることで、

    新郎の深い想いを、新婦と、参列者に、
    間接的に紹介することができたのです。

    難しい言葉を調べて深めるのは予定調和。

    日常の言葉を調べて深めるのは想定外。

    このギャップが心に残る。

    そして、
    ありきたりな日常からも、
    “発見”を見つけ、相手の気持ちに
    少しでも寄り添おうとする友人。

    そんな友人を持つ新郎もまた、
    温かく信頼できる人なのだろうな
    ・・・・と想像させる。

    聴く人に
    何層もの印象を与えるスピーチは
    間違いなく心に響く名スピーチなのです。







  • わかりやすい言葉で伝える


    ある日の披露宴、新郎の職場上司のスピーチ

    新郎は建築事務所に勤める建築士。

    上司は、そんな彼のアピール力の高さを
    参列者に伝えるため
    プレゼン時のエピソードを話しました。

    プレゼン、クライアント、コンペ、入札

    この4つの言葉、
    社会人ならだれでも解るはず・・・

    一般的には、そういう思い込みのもと
    スピーチでは解説されないことが圧倒的に多い。

    しかし、その上司はこう説明しました。

    コンペとは
    総予算が採用条件の入札とは違って、
    その企画がいかに素晴らしく、
    優れているか?が採用基準になります。

    ゆえに依頼者であるクライアントに、
    わが社の企画の魅力を強くアピールし、
    説得するプレゼンテーション力が
    重要になってくるのです。

    その点、彼は・・・・と繋げて本題。

    場所は披露宴会場。

    ご高齢の参列者にもわかるように。
    という配慮から、
    その説明を付け加えたのだと思う。

    でも、この説明は
    単にわかりやすいだけではない。

    もう一つの、
    素晴らしい効果を生むのです。

    それは、

    聴き手の脳内に舞台を作る
    ・・・という効果。

    本題に入る前に、
    舞台となる状況をイメージすると
    その後の話に具体性と躍動感が生まれます。

    つまり、事前の説明によって、
    新郎がクライアントに
    熱っぽくアピールしている様子が
    より臨場感を持って、
    聴き手の想像力に働きかける効果です。

    スピーチはライブ。

    編集がきかない生放送

    聴き手の脳内で
    スムーズな映像が映し出され
    エンディングには、
    会場が一体となって感動する。

    それが最高のスピーチ・パフォーマンス。


    でもこれは
    企業のプレゼンテーションも同じだろう。

    聴く側にとって わかりやすい言葉で伝える。

    その上司のプレゼンはきっと素晴らしいのだろうな。
    と、 大きな拍手を贈りながら想像したのでした。

  • 花が伝える、あなたのイメージ

    花を贈る・・・というのは、素敵でむずかしい。

    なぜなら、

    自分のために選ばれた、
    まごころのこもった花なのか?

    「女は花さえ贈っておけば喜ぶ」
    ・・・という気持ちで選ばれた花なのか?

    お花はおしゃべりだから、
    贈る人の気持ちを、そのまま相手に伝えてしまう。

    「アルフィー」という映画に、
    とても素敵なシーンがある

    極上の女性たちとの出会いを求めて
    イギリスからニューヨークにやってきた
    ハンサムなプレイボーイ
    彼の名前は、アルフィー(ジュード・ロウ)

    自由で気楽な独身生活をエンジョイしていた
    軽薄な男が、 ある日、本気の恋をします。

    その彼女に贈る花を、花屋の店頭で選ぶシーン。

    彼女のイメージを店主に告げて、
    1本、1本、慎重に、楽しみながら花材を選び、
    その人のためだけのブーケを作る。

    映画としての質はビミョウですが・笑
    このシーンだけは忘れられない。


    「花を贈る」というのは、
    その人に抱いている「イメージの美点」を
    形にして贈ること。

    人間は、どんなに分析力がある人も
    自分だけは客観的に評価できない

    だからこそ、いただくお花には価値がある。

    それは、花が雄弁に伝える
    贈る人からの、最高の褒め言葉だから。

  • 不機嫌 と 憂うつ

    高齢猫はいつもご機嫌というわけではない。

    それは体調がなんだか思わしくなかったり
    動くのが億劫な日が増えるからだと思う。

    それを

    「 今日は機嫌が悪いみたいね 」

    と表現してはかわいそう。

    うちのこは、
    自分の思い通りにならないことに
    苛立つ傲慢な猫ではないのだ。

    むしろ、周囲との調和を重んじる
    なかなかの猫格者なのですよ。

    ある日、動物病院の看護師さんが
    とてもいい表現をしてくださった。

    「だるちゃん、今日はちょっと憂うつなお顔ですね」

    そう!そうなんです!

    ああ、わかってくださって、ありがとうございます!

    不機嫌 と 憂うつ

    似ているけれど全然違う。

    周囲に嫌な緊張感を与える
    不機嫌と、

    自分の内面で解決しようとする
    憂うつは、

    似て非なる表現。

    うちのこは、今日もちょっと憂うつです。
    風が強すぎるからかな。