• 時間と手間と心を尽くす美徳

    心を動かすおもてなしとは、
    お金をかければよいというものではない。
    今日、私が司会を担当した披露宴、
    新婦父が竹トンボ協会の活動をしていることもあり、
    お父様とそのお仲間が、参列者全員分の竹トンボを
    一つ一つ、心を込めて作ってこられました。

    新婦父による遊び方のミニレクチャーに盛り上り、
    老いも若きも、会場中に

    『早く飛ばしたい!!!!!』

    のワクワクが広がった。

    一方、新郎の母は自然栽培の野菜作りが趣味。

    肉料理の付け合わせ用野菜を今日の日のために、
    一生懸命に栽培してくださった。

    8月から種付けし、色彩豊かな数種類の野菜を、
    今日にあわせて旬を迎えさせるため、
    日々、心を尽くして世話をしたそうです。

    人の心に響くおもてなしというのは、

    いかに時間と手間と心を込めたか。

    なのだと、改めて感じた。

    『わたしのために、そこまでしてくださった』

    という価値観。

    感謝の想いを伝えるために、
    自分のできることで精いっぱい、
    時間と、手間と、心を尽くすことをいとわない。

    そんな親御さんのもとに育ったお二人は、
    きっと優しくて温かい家庭を築き、

    素敵な教養人を育てるに違いない。

  • 日本茶が教える『やさしい女性』

    疲れている時や、落ちこんでいる時、
    そっと差し出されたおいしいお茶が、
    どんな励ましの言葉よりも
    安心感を与えてくれた。
    ・・・・そんな経験ありませんか?

    私は日本茶が好きで、お世話になった人に
    新茶を贈ることが多いのですが、
    男性へ日本茶を贈るときに、
    よくメッセージに添えるのが、この言葉。

    『やさしい女性に淹れてもらってくださいね』

    その言葉には3つの意味がある。

    ①お茶は女性に淹れてもらったほうが美味しい
    ②やさしい女性はお茶を丁寧に淹れてくれる
    ③やさしい女性はお茶の時間を幸せにしてくれる

    では、やさしい女性って、どんな人だろう。

    私はずいぶん前、日本茶好きが高じて
    『日本茶アドバイザー』の資格をとりました。

    その時に驚いたのは、日本茶の品質を評価する際、
    長所ではなく、欠点が重要であるということ。

    そう、日本茶の品質評価は減点方式なのです。

    今は検査基準が変わったかもしれないが、
    私が学んだころは、

    化学検査と官能検査という評価方法があり、
    化学検査はその名の通り、化学的な評価。
    官能検査は人間の目、鼻、舌を使って、
    茶の外観、香気、水色、滋味を確認する。

    減点方式ゆえに
    『葉いたみ臭』 『かぶせ味』
    といった専門用語も、

    欠点を指摘する言葉が圧倒的に多い。

    日本人は昔から、長所を数えるのではなく、
    短所を認める民族なのだと、

    とても腑に落ちた記憶がある。

    そうして選別され、家庭に届く日本茶。

    お茶は古くから、
    人と人とのコミュニケーションに

    欠かせない嗜好品。

    『言葉に出さずとも心が通じる』

    それは日本文化の中で育まれてきた

    美徳であり、幸せな生活習慣です。

    言葉で伝えるコミュニケーションが

    必要とされる現代社会だからこそ、
    茶の葉がお湯のなかでノビをして、
    ふわり、ふわりと開いていくように、
    お茶のじかんくらいは、
    穏やかな気分を愉しみたいもの。

    つまり、

    ことばではないコミュニケーションで
    ひとの心に寄り添い、
    丁寧にお茶を淹れられる女性が
    わたしのイメージする『やさしい女性』

    普段おしゃべりな私も、新茶の季節くらいは
    『やさしい女性になったつもり』で
    お茶を淹れようと思う。

  • 電話は声の玄関



    電話は「声の玄関」である。
    とくに、客とお店、
    客と会社・・・というシチュエーションの場合、

    第一声である
    「お電話ありがとうございます、
       ○○でございます」
    は、会社や店のイメージを決定づける。

    予約の電話をする
    注文の電話をする
    問い合わせの電話をする

    かけるほうは、
    相手宅に訪問するように少し緊張する。

    そして受けるほうは、
    「ようこそ!」という気持ちであるはず。

    この「ようこそ!」の気持ちが、
    しっかりと伝われば、
    相手の心に「信頼という橋」が架かる。

    先日、あるお料理屋さんに行きました。

    緑に包まれた山奥の老舗で
    都会から遊びにくる友人に
    自然の中、のんびりと食事を
    楽しんでもらいたくてそのお店を選んだのです。

    予約の電話、
    電話口に出てくれたのは
    声の印象から、40~50代の女性。

    「お電話ありがとうございます、
      ○○でございます」

    しっとりと優しく落ち着いた声。
    苔むした美しいお庭の佇まいをも連想する声。

    それはお店のイメージそのもので、
    それだけで安心してしまいました。

    お庭がきれいに見える部屋
    囲炉裏で魚を焼いてもらえるメニュー
    旅行中なのでお腹がもたれない料理内容
    予算はこのくらい

    訊きたいことを一方的に質問する私の話を
    親身に聴いてくださり、
    やさしく、わかりやすく回答してくれた

    どうしてそう感じたかというと、

    ① 相手の話を最後まで聴く

    ② 誤解を与えない話し方
    この予算のお料理メニューは(主語)
    こういう内容です(回答)


    私は予約の電話の際は必ず予約担当者の名前を伺うのですが、
    このかたに名前を伺うのは失礼だな。と思い、

    あえて伺いませんでした。

    最後のひとこと、
    「では、お越しをおまちしております」

    電話だから、姿は見えないけど、
    声だけで深々とお礼する姿が見える。

    温かく静かな五月雨のように落ち着いた声だった。

    たった2分程度の電話の会話で
    客との信頼関係を成立させるスタッフは
    会社やお店の財産です。

    本物の玄関で
    お客様をお迎えする前から、
    「声の玄関」でのおもてなしは始まっている。

    電話をとるとき、
    一人一人がそう意識することが何より大切なのだと思う。







  • 古都金沢、聴覚のおもてなし

    金沢の茶屋街・東山や主計町に行き、
    お店のお姉さんたちの 温もりのある
    たおやかな金沢弁を聴くと、
    金沢育ちの私ですら
    ああ、金沢弁っていいな。って思います。

    それは子供の頃、おばあちゃんが話していた
    懐かしい言葉とイントネーション
    なんとも優しい愛情のある響き

    幼いころを、ふと思いだし、
    童謡を口ずさむように、私の口調も自然に
    昔ながらの金沢弁になる

    これが県外からのお客様ならば
    なんともいえない旅情を感じることだろう。


    これはまさに、聴覚のおもてなし。

    人は見た目が9割…といわれます

    確かに外見が人の印象を左右するチカラは
    とても大きいけれど

    聴覚は無意識でも情報を感知し、
    脳に影響を与えます

    ゴルフ中継をテレビで見ながらうたた寝し、
    音声に影響されてゴルフの夢を
    見たことありませんか?

    声質や話し方は、思っている以上に
    人の印象、記憶に影響を与えているものなのですね。

    そして声質や話し方は、
    意識することでセルフデザインできる。

    同じ「いらっしゃいませ」でも、
    深く心に残る声と、
    そうでない声があるのです。

    古き良き金沢弁を話すお姉さんたちのことばを
    聴きながら、改めてそう感じた夜でした。