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『男の年輪』 写真家 秋山庄太郎 作品集
ご近所の耳鼻咽喉科に行くと、待合室でいつも開いてしまう『男の年輪』日経新聞の『私の履歴書』を飾った写真を
収録したものの一部を集めた写真集ですが、待合室のやや高い場所、
子供の目線には見えない場所に、
ひっそりと、この一冊が存在するセンスが私好み。この耳鼻咽喉科では、補聴器の無料貸出を
勧めるポスターが貼られていた。補聴器の使用は、老眼鏡の何倍も、
心情的に躊躇うことだと思う。年を重ね、褪せゆく身体に
やるせない切なさも感じるかもしれない。そんなとき、文豪や、芸術家や、政治家の、
年輪を重ねなければ表現できない、匂いたつような渋みや鋭さ、
豊かな自我や、独自の包容を、
その貌から感じられたとしたら、人生の褪せゆく旅路の意外に長いことにも、
期待や愛しさを感じるのかもしれない。老眼の男性が目を細める仕草は、
大人の色気がにじむ、なんとも魅力的なもの。とはいえ、深みをもって成熟し、
仕草や風貌からも味わいが増すことは、
放っておいて身に付くものではなく、そんな自分の未来を
イメージし続けた人だけが、
手にすることが許される、大人の勲章のようにも思う。 -
際立ちのよいひと~印象美の記憶②
どんなものも「真に良きもの」に至れば、
そこには無類の美しさが宿る。読谷村の工房で、琉球ガラスや、やむちん焼、
伝統工芸館で、人間国宝の紅型の着物や首里織、
琉球漆器などを見学したときに思い出した記憶。紅型(びんがた)の着物と言えば、
こんな思い出があります。石川県政記念しいのき迎賓館の
ポールボキューズで
結婚式に参列されていた着物姿の女性が
私の目には、一際輝いて見えた。年の頃は30代、黒髪のショートボブ。
金沢城の紅葉を一望する、
大きな一面ガラスのテラス。黄色と赤を基調とした、
シックでモダンな総柄の着物が
金沢の晩秋の景色と一体となり、
これまで見たこともない、
新鮮な存在感を放っていたのです。加賀友禅が、金沢の自然に寄り添う、
風のように優雅な美しさだとしたら、その着物は、金沢の自然を抱きしめる、
大地のように悠々とした美しさだった。門外漢の私はその参列者の女性に
「この着物はどちらのものなんですか?」
と、伺ったら、「これは沖縄の紅型・びんがたです」
と、その人は仰った。晩秋のない國で生まれ育った着物が
こんなにも紅葉に映えるということ。青空と真紅のデイゴの咲く亜熱帯の
明るく鮮やかなイメージの紅型に、
こんなにも落ち着いた、
胸打つ不思議な魅力があるなんて。装う人とのマッチングも然り。
無意味に華美に流れず、景観の一部として、
真の存在感を放つその人から私は目が離せず、
好奇心が抑えられなかった。その好奇心は1年後も続いていて、
ご縁あって訪れた沖縄では
仕事日の後にプライベートな時間を終日もうけ、
紅型との胸踊る再会を探す一日を過ごしました。残念ながら、あの日の感嘆には
出会えなかったけれど、
いつの日か紅型の着物で
晩秋の金沢を歩きたいという楽しい夢は
これからもずっと続く。チャンプルーの國は、伝統文化もまた
友好的で、混沌とした新しさを
育むのだろう。 -
際立ちのよいひと~印象美の記憶①
『目立つ』ことと『際立つ』ことは全く違う。ひとと違えば『目立つ』けれど、
それが他者の心地よさを引き出す美しさとは限らない。『際立つ』とは、周囲と明らかに違うこと。
しかも肯定的に。私なりの解釈では、
【景観の一部として、よい存在感を放つひと】
【 環境と馴染みながらも、画になるひと 】
そんなひとは少数だからこそ、
結果的に際立つ状態をつくります。以前、ブライダルの司会で入っていた
ホテルの介添えさんに、
『大層、際立ちのよいひと』が
いらっしゃいました。介添えさんとは、
花嫁さんの身の回りに気を配り、
行動をスムーズに導くお役目があります。ユニフォームが洋服の会場もありますが、
和装の花嫁さんには、着物姿の介添えさんが似合わせとして相応しいと私は思います。年の頃なら50代後半のそのかたは、
ショートカットで着物を自然に着こなし、
ハンカチを差し出す姿さえ、画になる。ただ立っているときも、
微笑みを絶やさず、
緊張した空気さえも、
穏やかな優しさで支配する。何よりも、
その人がビデオや写真に映りこんだときに、
その場の質を高め、
絵に額縁を添えるかのごとく、
花嫁をより一層、
品よく美しく見せる存在力の高さ。どんなに新郎新婦が
最高の笑顔のショットであっても、
背景に映りこむスタッフの姿が
弛緩していたら、
その最高の一枚は、
無意味なものになってしまう。『際立ちのよいひと』とは、
最高のエキストラであり、
自分の役目を、
外見と振る舞いで表現するひと。自己顕示欲という個性を、
知性と思いやりで、
程よい量だけ、
周囲に届けることが出来るひとなのです。 -
Instagramで気づいた色彩の趣向
グレイ、ブルー、エクリュ 、白、墨黒、ゴールド、
個人的に、たまらなく好ましいこの配色は、
まさに、北陸の空の色彩。一番落ち着く『色の世界』を自然に選び、
手元で愛でていることに、今朝、気づきました。インスタグラムの写真全体を眺めると、
その人がどんな世界を見て、
何に惹かれて暮らしているかが伝わる。とても興味深いツールですね。
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galleryで出会うartなコスメ
金沢市長町に昨年秋にオープンした、
『Atelier &Gallery Creava』歴史的な蔵が、コンクリート造りのビルの中に
ビルトインされているという、
好奇心をかきたてずにはいられないアート空間。重鎮作家の新作から、
若手作家の作品までをナチュラルに展示され、
工芸工房やカフェも併設されています。この空間で、明日(1月24日火曜日)から、
ネイルパフュームオイル Benedictionfを
お取り扱いいただきます。商品の企画段階から、
化粧品のコーナーではなく、
アートギャラリーが似合う
石川県ならではのコスメティックスを
目指していたので感慨無量。商品ロゴを書いてくださった、
国分佳代さんの作品と並んでの展示に、
Benedictionfも、里帰りさせてもらったように
誇らしげな表情です。カフェでお茶をのみながら、
サンプルのネイルオイルでテクスチャーや香りを
お楽しみいただくこともできますので、
ぜひ、お立ち寄りくださいませ(*^^*) -
2017 役割の手帳と、感情の手帳
新しい知識や備忘録を書き留めるのは、
年齢や、社会的役割にふさわしい、
落ち着きのトープグレイ、
Smythsonのシックな手帳。毎日のスケジュールを管理するのは、
『エンドレス』という名の、
純粋にココロときめく、
junaidaさんのポエティックな手帳。両方ともが自分らしさであり、
二つ揃ってこその個性。日々選択している小物一つ一つが
世界観を創り、
そのひとの大切にしている価値基準を語る。 -
南フランスに自生するナチュラルハーブ体験 in 能登島
フランスのブルターニュ地方在住で、
ハーブ農園を経営している、
英国IFAアロマセラピストの石田佳奈子さんから、メディカル・ハーブの考え方を学びました。
一番、心に残ったのは『薬』と『ハーブ』の違い。
『薬』は成分を抽出しただけのものだけど、
『メディカルハーブ』は、成分に加え、
植物が持つ命のエネルギーが宿っている。石田さんは1日1リットル、
毎日体調にあわせてブレンドして飲むようになり、
疲れ知らずの毎日になったそう。ワークショップでは、『オリジナルブレンドのハーブティー』
『ラベンダーとダマスクローズのナイトクリーム』
を作りました。
ナイトクリームの作り方は、
シンプルだけど手間がかかる!ミツロウと、ダマスクローズのキャリアオイル、
ラベンダー蒸留水を一定温度に温め、
撹拌すること45分。作る過程のなかで愛しさが増しました(^o^;)
アロマイベントは、女性ばかりかと思えば、
メディカルハーブにフォーカスしていたこともあり、 -
一筆描(ひとふでがき)の似顔絵アート
■ ラインで表現するコミュニケーション ■
大好きな方からのご紹介で出会い、
その日のうちに再会の約束を申し出てしまったほど、
得もいわれぬ、不思議な魅力を放つひと。一筆描きのアーティスト大森慶宣さん。
話していると、
『この人は、どこを見ているんだろう?』と、
視線の動きが気になる。でも、それが肯定的な感情であることが
伝わる視線。どこを見ているのかを訊ねたら、
『その人の一番きれいなラインを探してます』
とのこと。今日は2時間いろんなお話をしたあと、
2分で描いていただいた一筆描き。わたしの知らない、わたしの表情を捉えて、
静かな優しさを感じる側面を引き出してくださり、
ありがとうございました。毎月、HATCHi / THE SHARE HOTELSでは、
大森さんの似顔絵アートのイベントを
開催していらっしゃるとのことです。ご興味のあるかたは、
ぜひチェックしてみてください♪ -
太陽の如く、月の如く、輝きは不滅
貴族文化の洗練に育まれた独自の美学で、
唯一無二の作品を遺した映画界の巨匠
ルキーノ・ヴィスコンティのことば。私の2017年のテーマは、
『 純粋欲求に耳を澄まして行動する 』まだ見ぬ未来や、最新や、最先端なものに囚われず、純粋に昔から大好きだったことや、
男女を問わず、惹かれ、恋い焦がれるひと、
愛してやまないムードやニュアンスを、
日々追及すること。そんな時間を過ごしていると、
ドラマティックな出会いや、
嬉しい繋がりや、
ときめく場所へと、
不思議なほど自然に導かれていく。今日は、シネモンドで1963年の伊・仏の名作
ヴィスコンティの『山猫』の修復版を観て、ルドヴィート・カンタさんのチェロリサイタルへ。1970年代のフランス映画音楽を数多く手掛けた、
クロード・ボーリングのジャズとクラシックの
融合曲の演奏が、先に見た映画とも重なり、
静かに打ち寄せる感動の余韻がとまらない。大好きなコーヒーを丁寧に淹れて、
今日買ったCDを聴きながら、
パンフレットを読みふける。自分の人生において、
『不滅の輝き』と信じられることが、仕事にも、プライベートにも、
すべてに繋がっているのだと気づく時間。 -
雪は天からの手紙 ~中谷宇吉郎 雪の科学館
遅めの昼食を頂きながら、
中谷宇吉郎氏の著書を読んでいたら、何がなんでも
「中谷宇吉郎 雪の科学館」に、
今すぐに行きたい気分になり、
事務所から加賀市へ車を走らせること1時間。到着した瞬間に、
霰が降り始めるという、
天からのおもてなしを受けました(笑)それにしても、
なんて素晴らしい施設なんだろう。感動のあまり興奮しすぎて、
平常心で展示物が見られなくなったので(笑)、
併設のカフェで心を鎮めながら、「なぜ感動したのか」
を考えてみた。中谷宇吉郎という人物の、
態度の美しい言葉と文章 、
意図をもって選ばれた
愛用品や服飾小物たち、雪の結晶への、
真摯で誠実な愛情と好奇心、人との繋がりに関わる、
手紙やネクタイといった想い出の品々の様子、生きてきた歴史全てに、
中谷宇吉郎という人物の人生哲学を感じて、強い憧れが、
真っ白な雪となって、
心に深深と降り積もったのだとおもう。カフェから眺める柴山潟の冬空は、
みるみる表情を変えながら、
たった独りの観客のために、
自然の水彩画を描いてくれました。そして私は、閉館のアナウンスに
後ろ髪ひかれつつ、
近々の再訪を誓うのでした。