無意識の色気こそ本物
消えてしまうものだと私は思っている。
最近なにかと話題の壇蜜さんも、
キレイだとは思うけど、
セクシーだとは思わない。
本当にセクシーなのは、
コントロールの及ばない
「無意識の色気」なのではないか。
2000年に公開された、
モニカ・ベルッチ主演
イタリア映画 『マレーナ』
この作品は
名匠・ジュゼッペ・トルナトーレ監督による、
多感な少年の一途な恋の物語。
モニカ・ベルッチの奇跡的な美しさと、
悲しいほどのセクシーさが鮮烈な名作です。
時代は1940年代、
第二次世界大戦中のシチリアが舞台で、
12才の少年・レナートが、
年上の美女『マレーナ』に恋をしながらも、
一歩踏み出す勇気も、声をかける資格もない、
そんなもどかしさと、せつなさが伝わる恋物語。
老いも若きも男たちは皆、
本能的にマレーナに見とれ、
女たちは皆、狂おしい嫉妬からくる、
軽蔑と非難の視線でマレーナを眺め続けます。
本人すら懐柔できないほどの
「色気」というのは罪だ。
でも、それを神から与えられた女性って、
ほんの一握りの選ばれし人。
私がこれまでの人生で出会った
リアル・マレーナは
京都の伝説の芸妓・佳つ乃さん。
当時20代前半で、
すでに売れっ子の有名人だった。
19歳だった私は、幸運にも
金沢で行われたイベントでご一緒したのだ。
昼間の着物姿も美しかったけれど、
主催者に連れて行ってもらった
夜の食事会の私服姿が忘れられない。
髪を後ろにスッと束ね、
デコルテの開いたシンプルな黒いワンピース。
陶器のような真っ白な肌と、細い首、
緩やかななで肩、豊かな胸元、
素顔に近い薄化粧なのに、
まるで季節外れの白い花が
月影に一輪そっと咲いたような、
清楚でありつつ妖艶な美しさだった。
お姐さん達に心ない言葉で苛められていたが、
そこにいた人は皆、老若男女問わず、
完全に佳つ乃さんの虜になっていた。
本物の色気というのは
自分ではコントロールできない、
無意識に発する特別なもの。
模造の色気が幾重にも積まれた中、
燦然と輝くのは天然の色気。
天然が磨かれて、本物の珠玉になる
19歳の私は本能的にそう感じた。
壇蜜さんは女性に人気があるという。
それは私たちと同じ、
無意識の色気に憧れ、妬み、悩み、
努力する「普通の女の、いじらしさ」
に対する共感からではないだろうか。