アートと親族という関係性

金沢21世紀美術館が開館する際に、
メキシコ在住の石彫刻家である従兄の作品の
所蔵が決まり、親戚中が喜び湧きたち、
誇らしい気持ちで皆が展示を観覧しに行きました。

「さて? この石はなんなんだ?」と、
現代アートの見方がわからない門外漢たちは
首をかしげながらも、自慢げだったものです。

まるで我らがDNAそのものに
社会から承認を得たかのように。

あれから15年。

今では世界で活躍し、銀座でも個展を
ひらくようになった従兄の作品が、

21美15周年の企画展で展示されていると聞き、
今日、再び会いに行きました。

美術館の一角で、
お行儀よく鎮座する作品たちは、
ちょっぴり退屈そうな表情で、

ダイナミックに活躍できる空間との出会いを、
待っているようにも見えました。

創り手が、広い世界を求めて
金沢からメキシコに旅立ったように、

メキシコからやってきた作品たちもまた、
自由な世界に憧れる魂をもち、
籠の外に希望を抱いているのかもしれない。

そして、この15年の間に旅立った
親戚の叔父伯母の顔を思いだしながら、
心で対話する一日でした。

美術館に展示されている作品にはすべて
作者がいて、その向こう側にはかならず
家族や親族の誇らしさがあると思うと、
この美術館という場の体温が、
ふんわりと高くなった気がしました。

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