• 『森羅万象をまとう』

    雪に閉ざされた静かな石川県立美術館で、

    『森羅万象をまとう』を鑑賞。

    友禅作家・木村雨山、二塚長生、
    二人の人間国宝作品。

    “ 纏う日本画 ”と言われる加賀友禅の、
    “自然の素朴”が芸術的に描かれた美しさに
    引き込まれました。

    なかでも、こんな雪の日だからこそ
    心動かされたのは、二塚長生作品『雪』

    只只静かに、
    深々と降り積もる雪の無音の世界が、
    現実に降る雪と一体に感じられるのでした。

    1階カフェで選んだケーキも、
    かまくらのようなフォルム。
    お米のクリームが、懐かしく優しい甘さでした。

    @ Ishikawa Prefectural Museum of Art

  • 終わりなきParis ジャコメッティ展

    国立新美術館 開館10周年記念展
    2017年6月14日~9月4日

    開展2日目の平日だったこともあり、
    人も少なくゆっくり観賞できました。

    ジャコメッティといえば、
    日本の哲学者、矢内原伊作との
    交流でも知られていて、

    事前に書籍で、予習していたので、
    彼をモデルとした胸像や肖像画も
    より一層、感慨深く愉しめました。

    深い思索の中から生まれる
    作品の数々は純粋に美しく、
    ジャコメッティの人生そのものが
    ストーリーであり、作品だと感じました。

  • 時代そのものが『青春』だった時代~ファッションとメディア①

    ■ 時代そのものが『青春』だった時代
    ファッションとメディア① ■

    フランス文学研究者芳野 まい先生を迎えての
    連続講座カマダンアカデミーに参加しました。

    歴史の立役者として生きた人物たち、
    またはその存在を創り上げた人物たちが、
    どのように『時代』と

    『ファッション、メイク』を繋ぎ、
    影響力を発揮したのか。

    当時の貴重な映像や、写真を振り返りながら
    紐解いていく1回目の講座テーマは、
    『 ジャクリーン・ケネディ 』でした。

    パブリック・イメージを演出することを
    最初に始めたケネディ大統領夫妻が、

    どんな意図をもち、何をして、
    どんな結果を得ることができたか。

    そして、そこに関わった人たちとの
    ドラマティックな相関図。

    フランス的思考に影響を受けたジャッキーの
    アメリカ人らしからぬ発想力や、

    生涯を通じて自分の役割を見事に演じきった、
    ストーリーテラー的な生き様、

    特にケネディ暗殺後の葬儀の演出や、
    オナシスとの再婚、後期の恋愛を経て、
    それでも最期にはケネディのお墓に入ることを
    望み、実現した下りには、

    一人の女性の人生として感じ入るものがあり、
    おもわず前のめりになりました。

    2回目の参考図書は『エルメスの道』

    落ち着きリラックスした雰囲気で、
    受講者の皆様も、おとなの素敵な方々ばかり。

    何よりも、まい先生がご自身の人生をかけて、
    研究を積み重ねてきた膨大な知識を、
    『愛』と『好奇心』全開で、
    躍動感溢れる表現で語られる姿が

    魅力的すぎて惹かれます。

    次回を愉しみに、予習します✨

  • ノエチカ 古美術の会 北欧編

    ヴィンテージの家具や陶器の、

    扱い方や選び方、見分け方、魅力などを、
    金沢市広坂のNOWのオーナー
    梨野雅揮さんの解説で学ぶセミナーに
    参加してきました。
    梨野さんの選ぶ北欧の家具や小物は、
    ノルディックの素朴で温かいイメージに囚われず、
    クラシック、モダン、シンプル、エレガント。

    家具選びに大切なことは、

    値段や評価といった、
    他者が決めた既存の価値観に頼るのではなく、
    自分自身が『好き』である感覚が一番大事。
    という、梨野さんのメッセージから、

    日々、好きな家具を見て、触れて、
    愛でる時間の積み重ねは、
    人生の時間の質を積み上げることだと
    しみじみ感じました。

    後半はノルウェーのコーヒーをいただきながら、
    参加者同士の懇親タイム。

    普段お会いすることのない方々との

    他愛もないお喋りも新鮮で、
    初夏の風に吹かれながら、
    ふんわりと心地好い時間を愉しみました。

  • ふらり寄り道~西田幾多郎哲学記念館

    かほく市まで打ち合わせにきたので、

    大好きな場所に、ふらり寄り道。


    全館貸切状態という、贅沢すぎる空間。
    ゆっくり常設展示室を閲覧し、
    西田幾多郎の生涯を紹介するビデオも、
    全編観覧。

    しかもビデオのナレーターを後追いしながら、
    一緒にナレーションすること20分余り。

    自宅並みの気持ちの入り込みぶりで、
    不審者感満載のわたし(苦笑)

    西田幾多郎という人の、

    病苦、両親の離散、我が子との死別など、
    不遇な人生の歩みを知ると、
    【 哲学の動機は、「驚き」ではなくして、
    深い人生の「悲哀」でなくてはならない 】

    という言葉に、より一層の重みを感じました。

    また、よき教育者だった西田幾多郎は、
    手紙をよく書くひとだったそうで、

    たくさんの書簡の展示から、
    生きたその人の、人となりが滲んでいました。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    わたしの生涯は極めて簡単なものであった。
    その前半は黒板を前にして坐し、
    その後半は黒板を後ろにして立った。
    黒板に向かって一回転をなしたといえば、
    それで私の伝記は尽きるのである。

    ~続思索と体験より~
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    まことに「知ることを愛する」人物だったのだと、
    この言葉からも感じ入ります。

  • 花森安治の仕事 ~ 世田谷美術館

    最終日に間に合いました。

    『暮らしの手帳』の編集長だった花森安治氏の
    生涯の仕事を辿る企画展。

    母親が『暮らしの手帳』を定期購読していて、
    小学生の頃からずっと『すてきなあなたに』という、
    エッセイの世界観が大好きでした。


    真の贅沢とは、
    日常の中に自らきらめきを見つけ、
    悦びを創りあげるといった価値観に、
    どれほど影響を受けただろう。

    展示では、花森安治氏の戦争への怒りや、
    女性解放、『暮らし』という尊い営みへの想い。

    強い信念からあふれだす、
    圧倒的な行動力と生きる力の源泉が、
    膨大な数の資料で語られていました。

    また『すてきなあなたに』は、

    戦後といわれる時代が過ぎた後の、
    新しい世代の象徴的な企画だったことを知り、
    豊かで平和な時代に生まれ育った自分の幸せを
    改めて実感するひとときにもなりました。

    観賞後は、砧公園の桜の美しさと、
    雨上がりのマイナスイオンの心地好さが
    来たときよりも鮮烈に感じられて、


    【 しあわせの感受性を手土産にいただいた 】

    そんな気分になりました。

    のんびりお散歩していたら、
    フラワーショップに併設されたカフェに出逢い、
    ふらり立ち寄り、
    お茶とケーキをいただきました。
    什器もインテリアもシャビーな静けさがあり、
    このうえなく心地好い。
    帰り際に小さな花束を求め、ホテルの部屋に飾る。
    翌朝、コーヒーを飲みながら眺めるひとときは、
    まさに、すてきなあなたに的〝暮らしのシーン〟
    と、悦に入ってみる✨
    スイートピーとバラの色彩バランスが、
    窓の向こうの桜たちと、大層お似合い。

  • 東洋文庫 ~ 暮らしのなかに佇む隠れ家


    青空の土曜日に立ち寄った、

    文京区のミュージアム。

    三菱第3代当主 岩崎久彌が設立した、
    東洋学分野での日本最古、

    最大の研究図書館で、
    ずっと行ってみたかった場所。

    ミュージアムからオリエントカフェに繋がる
    『知恵の小径』にはアジア各国の名言が
    記されていて、一言一言を、こころに刻む午後。

    モリソン書庫の24000冊の蔵書に圧倒され、
    会期中の『ロマノフ王朝展』の、
    親しみやすいイラストパネルにほっこりし、

    オリエントカフェのゆったり和やかな雰囲気と、
    美味しいお食事にくつろぐ時間を愉しみました。

    写真は東洋文庫に行く前に寄った、
    神田万世橋のMaach。
    ピカピカの建造物には醸せない、
    経年の味わいが心地よい場所でした。

  • 時代が創った、9号サイズの呪縛

    芳野まい先生 ファッション・アカデミー

    連続講座の第2回目の教材は、
    1969年 仏映画『ポリー・マグー お前は誰だ』

    『時代が創ってきたファッション』

    学びにおける雑感。。

    1962年にマリー・クワントが、
    ミニ・スカートを発表した後、
    プレタポルテ(高級既製服)の影響が強くなり、
    時代はティーンエイジャーのような
    『若い身体』に価値を見いだすようになりました。

    そして私たちは、その当時の『時代の呪縛』に
    今だに囚われている。ということ。

    例えば、標準的な9号サイズが合わなければ、
    または既製服がきれいに着られないと、
    自分の身体を悪者にする傾向。

    標準的でない身体 = 美しくない

    そんな思い込みに囚われていないだろうか?

    私たちは誰もが、今の年齢に相応しい、
    個性的で素敵な身体バランスを持っていて、
    それを整えることが一番美しいはずなのに、

    標準トルソー(若い身体)に近づけようとするから、
    無理が生じる。

    ファッション業界の都合で創られた決め事に、
    振り回されない消費者になろう。

    既成からはみ出た個性は、

    封印するものではなく、研くもの。

    モードの変遷を辿りながら、
    自分自身の脳内フレームについても
    考えを深める二時間でした。

  • 一筆描(ひとふでがき)の似顔絵アート

    ■ ラインで表現するコミュニケーション ■

    大好きな方からのご紹介で出会い、
    その日のうちに再会の約束を

    申し出てしまったほど、
    得もいわれぬ、不思議な魅力を放つひと。

    一筆描きのアーティスト大森慶宣さん。

    話していると、
    『この人は、どこを見ているんだろう?』と、
    視線の動きが気になる。

    でも、それが肯定的な感情であることが
    伝わる視線。

    どこを見ているのかを訊ねたら、
    『その人の一番きれいなラインを探してます』
    とのこと。

    今日は2時間いろんなお話をしたあと、
    2分で描いていただいた一筆描き。

    わたしの知らない、わたしの表情を捉えて、
    静かな優しさを感じる側面を引き出してくださり、
    ありがとうございました。

    毎月、HATCHi / THE SHARE HOTELSでは、
    大森さんの似顔絵アートのイベントを
    開催していらっしゃるとのことです。

    ご興味のあるかたは、
    ぜひチェックしてみてください♪

  • 雪は天からの手紙 ~中谷宇吉郎 雪の科学館

    遅めの昼食を頂きながら、
    中谷宇吉郎氏の著書を読んでいたら、

    何がなんでも

    「中谷宇吉郎 雪の科学館」に、
    今すぐに行きたい気分になり、
    事務所から加賀市へ

    車を走らせること1時間。

    到着した瞬間に、

    霰が降り始めるという、
    天からのおもてなしを受けました(笑)

    それにしても、
    なんて素晴らしい施設なんだろう。

    感動のあまり興奮しすぎて、
    平常心で展示物が

    見られなくなったので(笑)、
    併設のカフェで心を鎮めながら、

    「なぜ感動したのか」

    を考えてみた。

    中谷宇吉郎という人物の、

    態度の美しい言葉と文章 、

    意図をもって選ばれた

    愛用品や服飾小物たち、

    雪の結晶への、

    真摯で誠実な愛情と好奇心、

    人との繋がりに関わる、
    手紙やネクタイといった

    想い出の品々の様子、

    生きてきた歴史全てに、
    中谷宇吉郎という人物の

    人生哲学を感じて、

    強い憧れが、

    真っ白な雪となって、
    心に深深と降り積もったのだとおもう。
    カフェから眺める柴山潟の冬空は、
    みるみる表情を変えながら、
    たった独りの観客のために、
    自然の水彩画を描いてくれました。

    そして私は、閉館のアナウンスに

    後ろ髪ひかれつつ、
    近々の再訪を誓うのでした。