30年前の懐かしい想い出


高校時代の3年間、
毎週土曜日の午後は、
お茶のお稽古に通っていました。

きっかけは、
憧れていた国語の先生が

『僕はお茶をたしなむような女性が好きです』

と、授業で言ったから。

『わたし、お茶、習いたい』

暴れん坊の娘が、

本来言うはずもないことを
突然、言い出したものだから、
父親は有頂天。

気が変わらないうちにと、
翌週には茶道の先生へのご挨拶を済ませ、
持ち物も、練習道具も、全部準備して、
笑顔で送り出してくれた。

その教室と、
国語の先生のご実家が近くて、
いつもお稽古のあと、わざわざ遠回り。

『もし先生に会ったらどうしよう!』

と、ドキドキしながら帰るのが
お稽古の一番の楽しみだったとは、
今も父は知らない。

『すてきな大人の女性になりたい』

と願うような想いで始めた茶道を、

30年の時を経て、
今年から改めてきちんと学び直す。

『すてきな大人の女性になりたい』

という気持ちのベースは同じだけど、

当時は照れくさいばかりだった、
様々な決まり事や所作。

目に留まらず見過ごした情緒を、
今の私はどう感じるのだろう?

30年前に使っていた
扇子やふくさのお稽古セットを見ると、

娘時代の自分の想い、
当時、今のわたしと同年齢だった
親の想いを交互に感じて、
なんとも不思議な気持ちになるのです。