際立ちのよいひと~印象美の記憶②
どんなものも「真に良きもの」に至れば、
そこには無類の美しさが宿る。
そこには無類の美しさが宿る。
読谷村の工房で、琉球ガラスや、やむちん焼、
伝統工芸館で、人間国宝の紅型の着物や首里織、
琉球漆器などを見学したときに思い出した記憶。
紅型(びんがた)の着物と言えば、
こんな思い出があります。
石川県政記念しいのき迎賓館の
ポールボキューズで
結婚式に参列されていた着物姿の女性が
私の目には、一際輝いて見えた。
年の頃は30代、黒髪のショートボブ。
金沢城の紅葉を一望する、
大きな一面ガラスのテラス。
黄色と赤を基調とした、
シックでモダンな総柄の着物が
金沢の晩秋の景色と一体となり、
これまで見たこともない、
新鮮な存在感を放っていたのです。
加賀友禅が、金沢の自然に寄り添う、
風のように優雅な美しさだとしたら、
その着物は、金沢の自然を抱きしめる、
大地のように悠々とした美しさだった。
門外漢の私はその参列者の女性に
「この着物はどちらのものなんですか?」
と、伺ったら、
「これは沖縄の紅型・びんがたです」
と、その人は仰った。
晩秋のない國で生まれ育った着物が
こんなにも紅葉に映えるということ。
青空と真紅のデイゴの咲く亜熱帯の
明るく鮮やかなイメージの紅型に、
こんなにも落ち着いた、
胸打つ不思議な魅力があるなんて。
装う人とのマッチングも然り。
無意味に華美に流れず、景観の一部として、
真の存在感を放つその人から私は目が離せず、
好奇心が抑えられなかった。
その好奇心は1年後も続いていて、
ご縁あって訪れた沖縄では
仕事日の後にプライベートな時間を終日もうけ、
紅型との胸踊る再会を探す一日を過ごしました。
残念ながら、あの日の感嘆には
出会えなかったけれど、
いつの日か紅型の着物で
晩秋の金沢を歩きたいという楽しい夢は
これからもずっと続く。
チャンプルーの國は、伝統文化もまた
友好的で、混沌とした新しさを
育むのだろう。