気まぐれこそ天から得た美質
ジャズ・ピアニスト
故・世良譲さんとの想い出。
金沢では毎年冬になると、
『フードピア金沢』というイベントが開催され、
各界文化人と金沢市民が、
料亭やレストランで食談するという、
恒例人気企画があります。
当時30代だった私が、
その年の司会を担当したのは、
デビュー50周年を迎えられた、
ジャズピアニストの世良譲さんでした。
フレンチレストランでの食事の合間に、
30分ほどトークタイムを設けて、
世良さんと司会者が参加者を前に、
ステージで対談するという、
ごく一般的な台本でしたが、
世良さんは、ご自分の主賓席のお隣に、
私の席を急遽用意して、
司会者も一緒に食事しながら、
会場の方々と自由に話すスタイルにしたい。
という前代未聞の提案を決行。
予定外のシナリオに混乱するスタッフや、
私を尻目に、飄々と食事し、
お酒を愉しみ、参加者のリクエストに応えて、
即興でピアノを演奏し、
くだけた質問にも笑いを交えて答え、
明るく華やかな最高に愉しい夜を演出されました。
その夜のフィナーレに演奏された曲は、
『Days of wine & roses 酒とバラの日々』
今でもこの曲を聴くたびに、
ダンディで、セクシーなあの日の紳士を
想い出します。
周囲からは『気まぐれ』
と捉えられる行動というのは、
実は空気を柔軟に読み、
動物的な感覚に従ったほうが、
結果的にall rightになるよ。という、
練度の高い大人の成功体験がなせる技なのだと
知りました。
““気まぐれこそ天から得た美質”“
三島由紀夫の小説の言葉通りに生きられたかた。
三島由紀夫の小説の言葉通りに生きられたかた。
あの日にプレゼントしていただいたCDを、
何故か無性に聴きたくなった夜。