テーラー時代の形見分け

実家に立ち寄り、今まで気にも留めなかった、
作業台の上にある箱を開けてみました。

父がテーラーをしていた時代の生地が
ショウノウの匂いに包まれて、
ぎっしり積まれていました。
我が家は兄もテーラーなので、
間違いなく、目ぼしい生地は、
兄がとっくの昔に持ち帰っているはず。
たがら、残っているものは、
クセがあったり、逆に無さすぎたり、
生地量が少なかったり、というもの。
でも、丹念に一つ一つ見てみると、
イギリス製のクラシックで可愛い生地や、

クッション用のファブリックにすれば、
きっと素敵になりそうな、
スコットランドのツイード、

シンプルなワンピースを誂えたくなる、
シックなスイス製の生地。。

なかには『 ねぇ、何故これを仕入れたの??』
と、亡き父に訊きたくなる、
Vシネマ的な激しい生地も(笑)

埃をかぶった古いトルソーを拭いていると、
父がうれしそうに傍で笑っている、
そんなイメージが浮かびました。

生きているときに、
この箱のなかのものに、
もう少し関心を抱いてあげればよかったなぁ。

と、少し後悔しながら、
母と紅茶をのむ夕刻。

『 全部、持っていきなさいね 』

と、母に言われて、
行商のように車に積んで(Vシネマは置いて)、
帰ります。

さあ、どんなふうに使おうか。。