『金澤の香り』抽象度の高い美意識


文香用の香りを作ろうと思ったとき、

金沢の香り・・・という概念が

あまりにも漠然としすぎていて、 
これではイメージが湧かない。
・・・と、第一の壁に当たりました。

そこで、文学の一節からイメージを広げよう。
と閃いたのが、香り作りのスタート。

では、どんな文学?

最初は泉鏡花や室生犀星といった、

金澤スタンダードを考えましたが、
最終的に行きついたのは、三島由紀夫でした。

『美しい星』三島由紀夫

主人公の暁子が金沢駅に到着する75ページから、
半世紀前の金沢の街の描写が繰り広げられます。

犀川、香林坊、長土塀、兼六園、内灘、尾山神社、

中でも、兼六園・霞ヶ池周辺の描写の
文学的な美しさに心奪われます。

三島由紀夫にしては珍しいSF物語

自分達を金星人と信じている埼玉県在住の一家と、
自称金星人の美青年・金沢在住の竹宮。

竹宮は加賀宝生をたしなみ、
道成寺の披キで面を付けたときに、
能面の向こうに広がる金星の景色を見ていらい、
自分が金星人であることを確信した。という設定。

コメディのようなストーリーながら、
基軸は『核爆弾の反対』です。

今から50年以上前に、三島由紀夫は
全身全霊で『核のない平和な世界』を
訴えていたのです。

そのシンボルとして文中で扱われているのが
兼六園の風景なのだと私は感じました。

『こんなに人間の影が
背後にすっかり隠れている庭ならば、
人間の作った自然も満更ではなかった。
そこにはさまざまな人間の特質、
憎悪も嫉妬も稟嗇も隠され、
天上の平和の見事な模写が、
澄んだ大気の中に浮かんでいた』

私たちの住んでいる街は、天上の平和。

青い鳥は目の前にいることを、
半世紀も前に三島由紀夫が教えてくれている。

香りスタイリストSaikoさんは、
早朝の兼六園でイメージを膨らませて、
その情景を香りに描きました。

柑橘系の澄み渡る爽やかさに、
サンダルウッドの上品で落ち着いたアクセントが効いた、
深く美しく、しかも透明感のある香りが完成。

和であり、洋である。

天然のエッセンシャルオイルを
贅沢に配合した本物の香り。

香りの名前は
『天上の平和~heveanly peace』

この香りを水引や、
文香ムエットに添えて手紙を送る。

『この香りに会いに金澤にお越しください』

・・・・・というあなたの想いとともに。