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STORY OF MY LIFE ~ 私の若草物語
激しく感情をぶつけあったり、
抱きしめあう家族という存在の愛しさや、
人間らしい生き方について改めて考える
素敵な作品でした。六本木の映画館はガラガラで、
以前「ボヘミアンラプソディ」を同じ会場で
観た日と比べていました。「ソーシャル・ディスタンス」を
重視する社会は風通しがいいけれど、このままのかたちで映画館が存続できるとは
思いづらく、映画館で映画を観ることは
非日常の贅沢になるのかもしれない。町中はどこへいっても、列をなして、
検温、消毒の繰り返し。マスク着用必須。この状態で夢見る買い物気分にはなりづらく、
今日の日本橋三越、高島屋はガラガラでした。成長を追い求めた社会が作り出してきたものが
次々に失くなっていく未来は、
どんな姿になるんだろう。そんな現実的なことを考えながら、
2020年の東京で、若草物語の姉妹たちの時代を見つめました。 -
クローゼット ~ 千早 茜
なんの先入観も、予備知識もなく、
気楽にタイトル読みしたのですが、
雨の日曜日にぴったりの、
読後感の瑞々しい一冊でした。物語は、18世紀から現代までの、
芸術品ともいえる西洋のドレスを所蔵する
私設美術館が舞台。登場人物は、そこで働く人々と、
きれいなものが大好きで、
日常にもスカートを履く男の子・芳(かおる)人が袖をとおさねば、
一年で古びた印象となる洋服というものを、200年以上の時を経ても美しく保つために
補修士という仕事があり、そのなかにも、ジェンダーや幼少体験の痛み
といった社会問題も関わってくる。服飾の歴史を愛情をもって語る言葉、
その、ひとつひとつがとても美しかった。 -
つつんで、ひらいて~本という無限のファンタジー
本は、紙という資源を消費するし、
印刷は、誤植という大きなリスクがある。
物流、保管というエネルギーも然別(しかり)電子書籍なら全て不要な手間隙。
全てにおいて悲合理的なこと、この上ない。
でも、作者が身を削って生み出した、
作品というスピリッツを、
ブックデザイナー(装幀家)の知恵と工夫で、
世界観をより明確にし、 -
君の悲しみが美しいから僕は手紙を書いた
◼️ 感情を想いはかる想像力 ◼️人間ひとりの、
たった一度の人生経験で知り得る感情など、
たかがしれている。だから、人は本や詩を読み、愛する人の中にある、
姿の見えない未知の感情を理解しようと、
救う言葉を見つける道しるべを探す。これまでの社会は、
だれが悲しもうと鈍感でいられるほうが、
目的に一足飛びに進めたかもしれないけれど、これからの社会は、
感情を想いはかる想像力こそが、
人間らしい営みを支えるものと、
人々が気づく世の中に変わるはず。本文より~悲しむものを見ると人は、すぐに励ましますが、
そんな振る舞いに出会うたびに、どうしたら悲しみの不思議は理解されるのだろうと感じます。同じ悲しみなど、けっしてありませんから、
本人のほか誰も、その悲しみの本体を知り得ようはずがありません。現代ではいつからか、悲しみは嘆かわしい、
惨めなだけの経験であるかのように語られるようになってしまいました。
かつては違ったのです。悲しみは、人間がこの世で感じ得るもっとも高貴な営みの一つでした。#君の悲しみが美しいから僕は手紙を書いた
#若松英輔
#人間がこの世に残すことのできるもっとも貴いものの一つはコトバである
#ことばと印象のコミュニケーション
#WORDROBE
#ことばの衣装部屋
#印象美なおとなの表現力教室
#EQ
#感情知能
#エモーショナルインテリジェンス -
永遠の門 ゴッホの見た未来
「 どこまでも澄みわたった狂気 」
シュナーベルによって描かれたゴッホを、
そんなふうに表現したくなりました。30代の若さで生涯の幕をひいた天才画家
ファン・ゴッホを演じたのは、
60代の名優ウィリアム・デフォー。社会での生き辛い苦悩や、
南フランスの自然のなかでの光に満ちた解放。複雑な感情を持つ人物が、
泣けるほど魅力的で愛しい存在として
胸に迫りました。ゴヤ、ベラスケス、ドラクロワといった、
偉大な芸術家に対しての敬意の現れは、
牧師の息子として生まれたゴッホの
人間性の根源を見るようでした。年の瀬、2019年最後に観た映画は、
「芸術家とはどんな存在なのか」
という問いとともに、 .
.
「未来の人々のために生きることとは」
を考えるものでした。 -
ぼんち ~ 京マチ子映画祭
◼️ わきまえの美学 ◼️
原作は山崎豊子。
監督は市川崑。
脚本は和田夏十。
撮影は宮川一夫、美術は西岡善信。面白くないわけがない。
戦前戦後の大阪船場商人の、
女性遍歴と商魂を描き出した文芸作です。ぼんちとは、賢いボンボンのことを
さすらしい。主演の市川雷蔵は歌舞伎役者ならではの、
優雅に浮世離れした軽妙な若旦那
喜久治役を演じ、京マチ子、若尾文子、中村玉緒、草笛光子、
越路吹雪など、彼を取り巻く女優陣扮する
華やかな魅力溢れる女性たちと、
数奇な半生を送る物語。放蕩の限りを尽くしても、
仕事も遊びもうまく帳尻をあわせて
誰からも恨まれない。そんな、ボンボンならではの、
天然の「育ちのよさ」や「いい旦那ぶり」という、今はもう歴史上でしか知る由無ない感覚に引き込まれました。また、下働きの女中にいたるまで所作が美しく、
座布団を差し出す、無駄のない動きや、妾が本宅にご挨拶伺いする際の、
立派だと評価される正しい立ち振る舞いなど、現代の常識に照らし合わせると、
おかしな文化や、非道な習慣だらけですが、その人間くささに、
どこかしら品性が滲むのは、
登場人物すべてが、自分の立場を
わきまえて生きているからだろう。戦争や没落の悲哀さえも、
あっけらかんと描かれていて、「人生とは長い夢なのか、、、」
そんな後味を残す名作です。
#シネモンド
#京マチ子映画祭
#ぼんち
#最高
#キャスト
喜久治/市川雷蔵 ぽん太/若尾文子 弘子/中村玉緒 幾子/草笛光子比佐子/越路吹雪 勢以/山田五十鈴 喜兵衛/船越英二春団子/中村鴈治郎 お福/京マチ子 -
4世代を旅するcinema
セリフは殆どない。心情を風景の描写によって語らせる演出が
印象派の絵画のように美しい映画。舞台は19世紀の北ベトナム
絹の里の富豪のもとに嫁いできた、
14才の妻を主人公とする物語。アッシュメイヤー監督の曾祖母の
リアルヒストリーを題材にしています。一夫多妻制、父権主義の時代、
女性は繭のなかの蚕の如く、
生まれたときから居場所も役割も決められて、
男子を生む道具としてのみ存在していました。それは遥か昔のことではなく、
たった4世代前の女性たちの現実。一方で、曾孫のアッシュメイヤー監督は、
14才までベトナムで暮らし、
ニューヨークで映画制作を学び、
世界で活躍するという自由を手にしている。3世代前の女性たちの現実。様々な事情をかかえて「赤線」と呼ばれる、
公認の売春地域で働く女性たちの生きざまを
リアルに描いた社会派娯楽作品。哀しみを内包したバイタリティ、
偏見との戦い、
したたかに蓄財する女、
貧困から抜け出せない女、女性性を活かす職業の選択肢は至極少ない。
でも、同調圧力に屈しなければ、
人生の主導権を持てるようになった時代。100年という年月のなかで、
世界中の女性たちが自分にできることで、
生きる環境を少しずつ変えてきた結果を
私たちは今、受け取っている。その事実にもっと感謝すべきだし、
私たちもまた、次の世代がより幸せに生きられるように、自分にできることで環境を整える役割を持っている。
2つの映画で4世代を旅して感じたことは、「No more 他力本願」#シネモンド
#京マチ子映画祭
#三枚綴りチケットを購入
#細雪
#ぼんち
#赤線地帯
#若尾文子lover
#第三婦人と髪飾り
#映画の合間はアシルワード @ シネモンド -
犬神家の一族 1976年
1976年の「犬神家の一族」をAmazon primeで観た。
アヘン、男色、恩人の妻との密通、戦争、
腹違いの姉妹、妾、親子怨恨、遺産相続、、 .血縁の複雑な関係性を把握するに従い、
人々の心に横たわる深遠の苦しみに引き込まれてしまった。正義と悪ではなく、
愛情と憎悪という、
相反する感情が共存し、引き起こした悲劇。本当に怖いのは、たたりでもなければ、心霊でもなく、ごく普通の人間たちですよ。そんな message が伝わりました。BGMに流れる大野雄二作曲の
<愛のバラード>の威力は、
子供心の記憶にも楔をうったけれど、
大人心の記憶にも新たな響きとして
今も困るほどリフレインし続けている。#お友達の投稿に影響されて
#犬神家の一族
#1976年
#高峰秀子の貫禄
#島田陽子の聖女感
#愛のバラード
#怖すぎるレコードジャケット
#柳原白蓮がモデルらしい -
ガーンジー島の読書会の秘密
観たい映画を追っかけて、
京都の出町座。 -
そのうちなんとかなるだろう ~ 内田 樹
あっという間に読了。
武道家でフランス文学思想家の、
内田樹(うちだたつる)さんの自叙伝。日比谷高校中退、家出、
大検で東大入学するも大学院3浪、
8年で32大学の教員公募に不合格、
男として全否定され離婚、
仕事より家事を優先した父子家庭歴12年。研究者として全く注目されず、
評価されない時期も長く、それでも内田さんは、
いつも愉しげで明るく、娘さんと二人ぼっち、
誰も知り合いのいない街での
親子ひしと抱き合うような暮らしにも
静かなしあわせが漂う。結局は、
自分の信じているものが現実を創る。記憶に残ったフレーズはいくつもありますが、
「自分らしさ」が際立つのは、
「なんとなく」を選択した場合においてです。
とくに計画もなく、計算もなく、
意図もなくしたことにおいて、
「自分らしさ」は鮮やかな輪郭を刻む。
「なんとなく」そのくらいの気楽さがあるから、理想に向かって、決して諦めることなく、歩を進めらるのだろう。#そのうちなんとかなるだろう
#内田樹
#自叙伝
#心と直感に従う勇気